2010.11.26 Friday

省エネ住宅Q&A【その5】木造で断熱性能を高めると家が腐りやすくなる?

【Q】

古い木造住宅に住んでいます。


この家に長く住み続けたいと考え、断熱性能を高めるよう改修したいと考えています。


ところが、断熱性能を高めると木が腐りやすくなるという話を聞きました。本当でしょうか?


【A】

「内部結露」が木材の腐朽やシロアリ被害を招く



断熱するほど家が腐る……怖い話ですね。


1995年に起きた阪神淡路大震災では、倒壊した家の壁の中が露わになり、

その多くに木材の腐れが確認されました。


木造の家は、腐ってしまうと弱くなります。今日、建てられる耐震構造の家でも、

腐ってしまえば同じです。



木材を腐らせているのは木材腐朽菌で、木材を食べてしまうのがシロアリです。


どちらも繁殖するためには「水」が必要で、木材が何らかの原因で湿ったままでいると発生します。


原因となる水をつくるのが「雨漏り」「水漏れ」、そして「内部結露」です。




写真1 浴室の水漏れで土台が腐った例




写真2 内部結露で断熱材にカビが繁殖した例



結露には表面結露と内部結露があります。


表面結露は、内装材の表面で起こります。


内部結露は、壁の中、天井裏、床下などで起こります。


見えない所で知らぬ間に、土台や柱をぬらします。




図1 典型的な内部結露




図1は典型的な内部結露の状況です。


壁の中に繊維系の断熱材を充填(じゅうてん)しています。


冬の一日、暖房している室内から冷えた外に向かって水蒸気が流れます。


同様に、室内の方が外より温度が高いので、熱も内から外に移動します。


ところが断熱材に遮られて熱は移動しにくくなっています。


このため断熱材の外側にある外壁は冷え込んでいます。


水蒸気が壁の中を移動して、この冷えた外壁にぶつかり、露点以下になると結露します。


これが内部結露というものです。


断熱性が高まれば高まるほど壁の中に大きな温度差ができて、

内部結露の危険性を高めてしまいます。


結露は断熱材をぬらして断熱効果を失わせ、やがて水滴となって流れ落ち、土台をぬらします。


土台はぬれて水を含み、木材腐朽菌を繁殖させ、シロアリまでがやってきて食害をはじめます。


これが内部結露の最悪のシナリオです。




内部結露を防ぐ2つの方法


内部結露を防ぐには2つの方法があります。


一つは水蒸気を壁の中に入れないこと。


もう一つは、壁の中に入った水蒸気を結露する前に外に逃がしてしまうことです。



前者の対策として図2のように室内側に防湿層を張って室内の水蒸気が壁に入らないようにします。


防湿層というのはビニールシートで写真3のようにすき間なく施工します。



図2 通気工法





写真3 防湿層の施工例



水蒸気はガス状でとても小さく、すき間があれば、わがもの顔で出入りしてしまいます。


コンセントボックスや水道管、ガス管、換気口などが防湿層を貫通するので、

すき間をなくすのは至難の業です。


そこで、壁の中に少し入ってしまった水蒸気を結露する前に外に逃がしてしまうことが考えられます。


ただし、外壁材には水蒸気を通さないものが多いため、水蒸気を逃がすことはできません。


そこで、断熱材と外壁の間に通気層をつくって、水蒸気を放出することにしました。


これが「通気工法」と呼ばれるものです(図2)。




図3 透湿壁工法


もちろん板や土、レンガなど水蒸気を通す外壁なら通気層は要りません(図3)。


これを透湿壁工法といいます。



また、気候が温暖な地域では、防湿層が不要なケースもあります。


通気層や防湿層をなくしてよい条件は、

国土交通省と経済産業省が示した「次世代省エネルギー基準」の

「設計・施工の指針」に明確に示されていますから、施工業者はこの資料で判断することができます。




写真4 防風層の施工例



耐震補強の合板にも危険が……



問題は、耐震を目的に断熱材の外側に構造用合板を張ることが多くなったことです(図4)。


合板は水蒸気が抜けにくい材料なので、内部結露の危険性が高まります。


従って、合板を張る時は「水蒸気は外に向かうほど開放」の原則にのっとって、

合板よりも高い透湿抵抗が必要になり、防湿層をなくすことはできません。


室内側の透湿抵抗と、断熱材から外側の透湿抵抗の比率についても

次世代省エネルギー基準に示されているので、この比率で防湿設計することができます。



また、水蒸気が透過しないプラスチック系断熱材を用いた外張り断熱工法は、

断熱材の中を水蒸気が移動しないので、

充填断熱のような対策をとらなくても内部結露は起こりません(図5)。



図4 耐震構造(合板張り)




図5 外張り断熱工法



見えない所で起こる内部結露は不安だし、怖いものです。


しかし、今回解説したように、防露理論は確立しています。


きちんと対策のできる優秀な施工業者に託せば、怖いものではありません。




【回答者】 南 雄三(みなみ ゆうぞう)




 
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