2010.11.25 Thursday

省エネ住宅Q&A【その4】高断熱・高気密でもタンス裏のカビは防げない?

【Q】

自宅の建て替えを検討しています。


大掃除のときなどにタンスを動かすと、後ろの壁にカビが生えていることがよくありますが、

同じ室内なのに、なぜ家具の背後にはカビが生えやすいのでしょう?


高断熱・高気密にしただけでは防げないのでしょうか?


 



【A】

カビの要因となる「結露」を防ぐには


カビは汚いし、嫌なニオイがして不快ですね。


カビは、温度15〜28℃、相対湿度70〜95%を好むといわれますが、

湿気さえあれば南極でも出現します。


アルミやガラスにも繁殖し、プラスチックは大好物です。


15〜28℃といえば普通に生活している温度。


そこに湿った部分があればカビが繁殖します。



風呂場の天井に繁殖したカビの例



湿らせる要因の一つに「結露」があります。


なぜ結露は起こるのでしょう?




空気の中には水(水蒸気)が含まれており、空気の持てる水の量は温度によって変化します。


空気をバケツに例えてみましょう。


温度が高ければバケツは大きくなり、温度が下がると小さくなって水を少ししか持てなくなるのです。



例えば、20℃で相対湿度60%の空気があります(図1a)。


これが冷やされて12.2℃になると、空気のバケツは小さくなりますが、

水の量は変わらないのでアップアップの状態です。


この状態が飽和状態で、相対湿度は100%(図1b)。


さらに冷やされると、水はバケツからあふれてしまいます。


これが結露です(図1c)。




図1 結露発生のメカニズム


結露を防ぐ方法としては、

(1)空気を冷やさない(2)空気中の水を減らす──の二つが考えられます。


空気を冷やさなければ絶対に結露しないので、これが一番よい防止策です。


ただし、日本の家の中には暖かい所と寒い所が混在しています(図2)。


そこで無理のない燃費で全室暖房(図3)を実現するのが高断熱・高気密の目的で、

このあたりのことは第2回の回答で既に述べた通りです。







図2 個別暖房





図3 全室暖房

 

空気中の水を減らすという方法は消極策ではありますが、

家全体を暖めない日本ではこの方法しかとれませんでした。


すき間風は寒いけど室内の水蒸気も除いてくれるので、これを良しとしてきました。


しかし、すき間風は水蒸気を屋外に排出すると同時に部屋を冷やすことになるため、

乾燥と冷えのバランスが崩れると結露を助長させてしまいます。


そこで建物の気密性を高めて、計画的に換気することが求められるのです。





「乾燥暖房」と「調湿」による結露防止の仕組み


現在、シックハウス法によって、すべての住宅に機械換気の設置が義務付けられ、

室内空気汚染を防止するために必要な換気量として

「1時間当たり換気回数0.5回」と設定されています。


1時間当たり換気回数0.5回とは、2時間で換気回数1回、

つまり部屋の空気を2時間ですべて入れ替えるだけの換気量を確保するということです。


この換気量は結露防止を目的としたものではありませんが、

それでも生活する上で発生する水蒸気を十分に排出することができる量ではあります。

つまり、現状の家は結露を防ぐのに十分な換気量があるといえます。


とすると、タンスの裏側で結露するのは家全体の換気量とは別の理由がありそうです。



話を「空気中の水を減らす」方法に戻しましょう。





対策には換気のほかに「乾燥暖房」と「調湿」があります。


暖房には色々な手法があります。


石油やガスを使うストーブは、燃焼ガスを放出するだけでなく大量の水蒸気を吹き出しています。


1リットルの石油を燃やすと実に1.13リットルの水蒸気が発生します。


「なぜ?石油の量より水の量が多いの」といわれても……これが化学反応というものです。



従って、室内に排気ガスを放出する暖房器具(開放型暖房器具)は空気を汚すだけでなく、

水蒸気を室内にまき散らして結露を助長します。



空気の汚れを防ぐことと併せて、

水蒸気を放出しない「乾燥暖房」ができる機器の使用が薦められます。



家の中で発生した水蒸気は、換気で除去されるだけでなく、内装材や家具に吸収されます。


これが「吸湿」です。


吸湿された水蒸気は、室内の空気が乾燥すれば放出(放湿)されます(図4)。


こうして吸湿と放湿を繰り返すことを調湿といいます。



昔の家は土壁や板、畳、襖(ふすま)、障子など多くの建材が調湿性をもっていました。


しかし、今日の家のビニールクロスやフローリングなどは水蒸気を吸収することができず、


結露すればビッショリ濡れてしまいます(図5)。



この反省に立って、最近では調湿する内装材の開発が増えてきました。




図4 調湿性のある壁




図5 調湿性のない壁





タンス裏の壁にカビを生やさない方法




図6 タンスの裏の結露




さて、本題に戻りましょう。


なぜタンスの裏側の壁に結露が発生し、カビが繁殖するのでしょうか。


それは図6のように家具の後ろまで熱がまわらないからです。


つまりタンスが断熱材になってしまい、ほかの個所より冷えた部分を室内につくっているのです。


さらに、家具と壁の間は、わずかなすき間しかないために、空気が流れにくくなっています。


つまり、熱がまわらないし、換気もしにくい部分、それがタンスの裏なのです。


こんな時は、タンスの裏の壁に調湿性をもたせればカビを防げそうです。


ところが、空気が淀んでいるために放湿するチャンスがありません。


いつも湿っている所では調湿性が役に立たず、むしろカビを誘うことになります。



以上のように、せっかく結露の正体を知り、結露を防ぐ方法を知ったのに、

タンスの裏側に関してはこれらの防止策がとれないことが理解されたと思います。




「だったらどうすればいいの?」という質問がきて当然です。




図7 タンスの裏に空気と熱を送る


答えはタンスを壁にくっつけないで、少しでも大きくスペースをつくること。


そして、タンスを床にベタッと置かないで、床との間にもすき間をつくることです。


これで熱と空気をタンスの裏に回すことができます(図7)。



もちろん暖房は排気ガスを室内に放出しないものにし、

壁にはしっかり断熱材を入れ、建物を高断熱・高気密として全室暖房にすることが重要です。



タンスの裏に空気と熱を送れば良いといっても、

その空気が冷たくて、さらに断熱性が低くて壁が冷えていれば結露は防げませんのでご注意を。





【回答者】 南 雄三(みなみ ゆうぞう)




 
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