2016.12.18 Sunday

「暖かい住宅」を知っている人が少なすぎる!【その2】

「暖かい住宅」を知っている人が少なすぎる!【その1】からの続きです。

 

 

恐れ入りますが、前の記事をお読みいただいてから、読んでいただければ幸いです。

 

  

 

昨日の記事に書いたように、

 

以下に日経ホームビルダーの今年7月号の記事を転載します。

 

 

 

 

暖かい住宅を知る人が少ない日本の実情

---------------

講師/松尾和也

 

 

 

「前に住んでいた住宅が寒かった人か、逆に暖かかった人ほど

 

次に建てる住宅に高断熱を求める傾向にある」・・・。

 

こんな調査結果に触発された同コラム筆者の松尾和也さん。

 

「暖かい住宅に住んだことがある人は、日本にどのくらいいるのか」と、

 

独自の概算を試みました。

 

その結果は、わずか10人に1人でした。

 

計算に用いた数字から、日本に省エネ住宅が普及していない実態が浮き彫りになった。

 

(日経ホームビルダー)

 

■■■■■■■

 

 

 

 

●2013年における日本の世帯数や住宅棟数

(資料;2013年の住宅・土地統計調査をもとに作成)

 

 

 

 

 

 

最近、前に住んでいた住宅が寒かった人か、逆に暖かかった人ほど

 

次に建てる住宅に高断熱を求める傾向にあるという、

 

東京大学の前正弘研究室が実施したアンケート調査の結果を拝見しました。

 

確かにその通りだと思います。

 

では日本において暖かい住宅に住んだことがある人というのは

 

どのくらいいるのでしょうか?

 

気になったので概算で推計してみました。

 

日本には既存住宅が約6000万戸あると言われています。

 

世帯数はおよそ5,200万世帯、人口は約13000万人です。

 

まずは既存住宅の断熱性能の分布を表すグラフです。

 

 

 

  

●暖かいと言える基準の住宅は5%

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも講演時に言うのですが、このグラフの中で、

 

私が暖かい住宅として「最低限許せる」レベルに該当するのが

 

平成11年(1999年)基準で、たった5%しかありません。

 

次に戸建て住宅とマンション比率を見てみたいと思います。

 

およそ55%が戸建て住宅、42%が共同住宅となっています。

 

上記2つのデータから戸建て住宅でかつ1999年基準を満たしている比率は

 

5%× 55% = 2.75%という結果になります。

 

 

 

 

暖かいマンション住戸の条件

 

次に共同住宅です。

 

1999年基準を満たしている比率は5%× 42% = 2.10%となります。

 

しかし、マンションは基準を見直していなくても暖かい住戸があります。

 

よく「マンションが暖かいのは鉄筋コンクリート造りだから」と言う人がいますが、

 

それは違います。

 

マンションが暖かいことが多い最大の理由は

 

上下左右が部屋に囲まれていることが多いからです。

 

もう一つは木造住宅に比べると、特に配慮をしなくても

 

気密性能が高くなってしまっていることが多いからです。

 

ですので、最上階や角部屋に住んでる人は決してそれほど暖かいわけではありません。

 

以前にも紹介しましたが、最近一部のデベロッパーではこのことを燃費として

 

表示するところも出てきました。

 

イメージではなく、きちんと燃費で性能の違いが語られているのです。

 

このようにマンションは住戸の条件によって暖かさが違ってきます。

 

基準に適合していなくても暖かい住宅があるのです。

 

その条件は、「南向き」「複層ガラス」「中部屋」と考えています。

 

まず、「南向き」について説明します。

 

マンションの場合は玄関側が共用廊下、リビング側がバルコニーとなっていて

 

バルコニーがある一面でしか採光が取れないパターンが多くなっています。

 

この場合、バルコニーが南向きどうかで日射によって入ってくる

 

熱量が大きく異なります。

 

また南に向いている場合、バルコニー自体が夏の日射遮蔽にもなるので

 

夏も東向や西向きに比べて涼しくなります。

 

これらのメリットがあるからこそ、南向きは一般的に高額に評価されることになります。

 

当たり前と言えば当たり前ですね。

 

では、マンションの南向き比率がどのくらいか?ということを

 

某マンション検索サイトにて調べてみました。

 

対象は7,000件。検索項目に南向きとチェックを入れて調べた結果、

 

該当した比率は約64%でした。

 

次にマンションにおける服装ガラスの採用比率を調べてみました。

 

2013年の住宅土地統計調査によると、共同住宅の住戸で、

 

すべての窓に窓硝子がついている比率は約6.5%でした。

 

いくら上下左右が囲まれているとは言えシングルガラスだと冷輻射が強烈で

 

暖かいとは言い難い状況になってしまいます。複層ガラスである事は重要です。

 

次に「中部屋」の比率も調べてみる必要があります。

 

適切な資料がなかなか見つからないので推測してみました。

 

東京都が2013年にまとめた「マンション実態調査結果」によると、

 

分譲マンションの戸数別の比率は以下のようになります。

 

 120戸  43%

2140戸  27%

4160戸  2%

6180戸  5%

81100戸  2%

100戸以上 11%

 

これらを平均すると1棟あたり18.4戸となります。

 

100戸以上のマンションを100として計算してることもあるので

 

仮に20/棟として考えてみます。

 

20戸のマンションを1フロア4室の5階建ての住戸配置とすると、

 

赤色の中部屋比率は40パーセントになります。

 

最下階は下に部屋はありませんが、中部屋として差し支えないレベルの

 

暖かさと判断しました。

 

 

 

  

20戸のマンションの中部屋比率

 

 

 

 

暖かい暮らし10人に1

 

以上で、知りたいデータが全て揃いました。

 

マンションにおいて暖かいと言える条件を掛け合わせて行くと、

 

0.7%と言う結果になりました。

 

共同住宅42%×南向き64%×服装ガラス6.5% ×中部屋40%0.7%

 

1999年基準を満たしている戸建て住宅2.75%とマンション2.10%に、

 

追加の0.7パーセントを足し合わせると5.5%という結果になりました。

 

既存住宅の6000万戸にこの比率をかけると

 

333万戸に過ぎないという結果が浮かび上がります。

 

また5.55%という割合を13000万人にかけてみると、722万人と言う結果になります。

 

ただ、北海道だけは550万人のほとんどの人が全館暖房にで暮らしています。

 

この後150万人× (1005.55%)=519万人も暖かい住宅に暮らしているのに

 

上記の722万人から漏れているのでこの人々をも足し合わせると1241万人が現在、

 

最低限の暖かさを保てる住宅に住んでいると言えそうです。

 

という事は大体10人に1人(9.5%)位と言う感じになります。

 

(実際には、青森を中心とした北東北は全館暖房比率が高いです。

 

それらの地域は割愛しています)

 

また北海道の全館暖房による550万人が体感している暖かさと、

 

全国の計算結果から出た約700万人の温かさはかなりレベルが違います。

 

北海道の全館暖房は全館24℃といった非常に高い室温で

 

生活されている人が多いからです。

 

北海道レベルの暖かさを常識的な暖房費をで賄える住宅比率となると、

 

ほぼ間違いなく1%を切ることになると思います。

 

 

 

 

暖かさを求める人、求めない人

 

余談ですが日本の設計担当者は男性が多いようです。

 

男性の場合、寒がりだと答える割合は約3割です。

 

先程の住人に1人と言う割合を掛け合わせると、

 

「寒がりでかつ暖かい住宅に住んでいる設計担当者」

 

すなわち暖かい住宅を親身になって設計してくれそうな担当者」である確率は

 

良くても設計者30人に1人位ではないのか?

 

新築する人にとってはそんなことが言えるかもしれません。

 

ここでもうひとつ押さえておかなければならない現実があります。

 

地方郊外の高齢者は生涯、無断熱住宅にしか住んだことがないという人がほとんどです。

 

そういう人は身体的にも住宅の側面からも

 

最も断熱化が必要とされる条件が揃っています。

 

しかし、暖かさの快適性を知らないが故に、

 

一向に断熱改修をしようと言う意識が働きません。

 

また一般的にそういった住宅は非常に面積が広く、

 

全体を断熱改修するのが極めて難しい状況が多く存在します。

 

さらには、貯金が多い世帯も多く、非常に高額な光熱費が払えてしまう状況にある人が

 

多いということも改善が進まない大きな要因だと思います。

 

一方で、以下のような人は断熱性を求める傾向が強いといえます。

 

・大学時代、独身時代、新婚時代に一度は鉄筋コンクリート造の

 中部屋に住んだことがある。

 

・北海道もしくは欧米に居住したことがある。

 

住宅を設計する際、ほとんどの実務者はその地域の省エネ基準のみに基づいて

 

断熱仕様を求める傾向にあります。

 

しかし暖かい住宅を作ると言うことに関して言えば、建て主の寒がりとは言え、

 

そして今現在の住居の暖かさ、かつて住んだことがある住宅住居の暖かさが

 

非常に重要になってきます。

 

私の場合「寒がりでかつ北海道出身、もしくは南向きマンションの中間階の中部屋に

 

住んでいた」というような建て主から依頼を受けた場合には最新の注意を払って設計します。

 

具体的に言うなら「新居より狭い従来の住戸で支払っていた光熱費以下で、

 

従来と同等以上の暖かさを実現」させることができなければ、

 

決して満足してもらう事はできないからです。

 

これは非常に厳しい条件で、特にマンションから戸建て住宅に引っ越す場合は、

 

HEAT20G2グレード位を満たしておくことは最低限必要になってくると

 

考えておくのが無難です。

  

 

 

なんちゃって省エネ住宅から脱するためには・・・まとめ
 

  

 

筆者紹介
 

 

 

 

以上が日経ホームビルダーの記事ですが、

 

長くなりましたので、この記事に対する私の解説はまた明日・・・

 

 

 

 


 
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