2016.10.28 Friday

"効かない制震"を選ぶな!【その3】

"効かない制震"を選ぶな!【その2】からの続きです。

 

 

恐れ入りますが、前の記事をお読みいただいてから、読んでいただければ幸いです。

 

 

 

昨日の記事の続きの前に、今日の記事で出てくる用語を説明しておきます。

 

 

 

層間変形角とは、地震時に長方形の建物が平行四辺形に変形する際の

各階の上部が水平方向に移動する距離を階高(各階の高さ)で割った値。

何分の1の数字で表す。

 

 

 

 

あと、今日はちょっと難しい話が多いと思いますが、

 

難しい部分は読み流していただいても良いと思うので、

 

何となくのイメージをつかんでいただければいいなと思っています。

 

 

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【ポイント】システム全体

 

 

 

 

 

 

木造戸建て向け住宅向けの製品は、筋交いタイプのほか、方杖、仕口、面材など多様です。

 

 

さらに、ゴムやオイル、鋼材など、使用部材で分類しても様々な製品が存在しています。

 

 

だが、これらの性能を評価する統一基準がないのが現状なのです。

 

 

各メーカーで評価方法はバラバラ。

 

 

これが制震システムの善し悪しをわかりにくくする要因の1つとなっているのです。

 

 

 

そのため、「実験で確認すると、中には性能が疑わしい粗悪品もある」と

 

東京工業大学未来産業技術研究所都市防災研究コアの笠井和彦教授は指摘します。

 

 

現在、この課題を解消すべく指針作りが進められています。

 

 

建築研究開発コンソーシアムで組織された住宅制震構造研究会の研究成果などをまとめた

 

「小規模住宅制震設計指針」です。

 

 

葛西さんはこの指針作りに携わっています。

 

 

ここでは指針のベースとなる考え方や識者の意見などを参考に、見極めポイントを探ります。

 

 

 

 

 

装置と架構を一体で評価

 

 

効く制震システムの条件について、

 

「架構と組み合わせた状態(制震壁)で性能が発揮されるもの」と葛西さんは説明します。

 

 

制震システムは、躯体の変形を抑えることで、躯体自体へのダメージを低減します。

 

 

装置が自身のエネルギーを吸収し、変形量を抑えるのが基本的な仕組みです。

 

 

また耐力壁とは異なり、変形後も元に戻り、再び変形を抑える減衰力を発揮。

 

 

繰り返しの地震に対応できる特徴を持ちます。

 

 

そのためには、制震装置が効果的にエネルギーを吸収できているか、

 

さらに、制震装置にエネルギーが効率的に伝わるか、

 

架構を壊さない仕組みとなっているかといった構成のバランスが鍵を握ります。

 

 

具体的には次の5つが要となります。

(1)架構に加わる地震力(力と変形)が制震装置に効率的に伝わるか。

(2)架構の接合部金物が損傷しないか。

(3)制震装置に伝わった地震力(力と変形)に対応できる装置の力があるか。

(4)装置を止めつけている金物は耐えられるか。

(5)架構の引き抜けが起きたりしないか。

 

これらのポイントを満たせないようなものは、効かない制震システムと言えます(図1)。

 

 

 

(図1)効く制震システムの基本条件となる5つのポイント
 

 

 

 

 

方杖タイプは要注意

 

 

制震システムを「装置+架構」一体の制震壁で評価することを踏まえると、

 

様々なタイプの中でも「方杖、仕口タイプには注意が必要」と葛西さんは指摘します。

 

 

このタイプは架構の隅部に制震装置を取り付けるものです。

 

 

制震システムの開発などに携わる京都大学生存圏研究所生活圏構造機能分野の五十田教授も同様に、

 

方杖タイプについて警鐘を鳴らしています。

 

 

方杖、仕口タイプは設置場所が接合部に近いことから、地震力(力と変形)を伝えるバランスが悪い。

 

 

例えば、小さな変形でもよく聞くように制震装置を堅くすると、柱が変形してしまい、

 

制震装置に変形量が伝わりません(図2)。

 

 

 

(図2)方杖・仕口タイプの課題点
 

 

 

寺社仏閣のように柱が太ければ問題ないですが、一般的な住宅で使われる105ミリ角程度の太さでは、

 

柱が持たない場合もあり得ます。

 

 

反対に制震装置に大きな変化を伝えてエネルギーを吸収しようとすると抵抗力が小さくなり、

 

制震装置に力が伝わりません。

 

 

制震装置が取り付けられていないのとほぼ同じ状態となるため、

 

変形が大きくなれば躯体が壊れてしまいます。

 

 

つまり、制震システムが効いたとは言えないのです。

 

 

また、方杖、仕口タイプは、制震壁1枚あたりの減衰力が小さくなりがちです。

 

 

制震装置の設置数を増やすなどの対応も必要となります。

 

 

それだけに、「課題を理解して制震装置を開発することが重要」と千博産業推進事業部

 

エンジニアリングマネージャーの上野浩志さんは説明します。

 

 

同社は、方杖タイプの制震システム「エヴォルツ」を販売するメーカーです。

 

 

課題を踏まえて開発していると話しています(写真1)。

 

 

 

(写真1)方杖タイプの課題を念頭に開発

「方杖タイプの制震システムが全てダメなわけではありません」
 

 

 

例えば、同社の制震装置の場合、自動車のショックアブソーバー(車体とタイヤの間で

 

振動を吸収するダンパー)の技術を応用しました。

 

 

小さな変形量の時点からダンパーが力を発揮するように調整。

 

 

入力される受信力が大きくなった際にダンパーが堅くなりすぎて柱に負担がかからないように、

 

一定の値で抵抗力が頭打ちになるよう調整しています。

 

 

さらに同社は、制震装置の取り付け配置や数などを、限界耐力計算を実施して確認する。

 

 

住宅の規模にもよるが1棟あたり12〜20個取り付ける設計としました。

 

 

 

 

 

75分の1で4kN未満は問題外

 

 

制震壁に求める性能の目安として、笠井さんは、大地震後に架構が大きく損傷しないことと言います。

 

 

具体的には、「最低限の性能として、建築基準法におけるレベル2の地震動で層間変形の

 

最大変形角が75分の1ラジアン以下に収まること」と説明します。

 

 

その際の水平荷重は、最低でも4kNと指摘しています。

 

 

変形量で言えば、水平荷重が約4kNの際に、階高が3,000mmの場合では最大変形が約40mm、

 

階高が2,700mmであれば、その75分の1ラジアン、つまり36mm以内となります。

 

 

ただしこれは「最低レベルの数値」と笠井さんは念を押します。

 

 

これまでの実験や他の研究者の情報などを調べると、

 

「性能が高い制震壁では最大変形が75分の1ラジアンの時に15kNと言うものもあった」と

 

東京工業大学未来産業技術研究所都市防災研究コアの松田和浩教授は話しています。

 

 

 

 

 

リサージュは面積と傾きと形

 

 

もう1つの判断材料はリサージュ曲線です。

 

 

装置を加工に組み込んだ制震壁を水平に押したり引いたりすることで抵抗力を調べ、

 

抵抗力と変形量の履歴をグラフ化したものです。

 

 

制震システムの性能を確認する際に、3つの試験ステップを踏むことが理想的と笠井さんは説明します。

 

 

制震装置自体の性能を試験し、架構に組み込んで制震壁で性能試験。

 

 

そして、実大での振動実験です。

 

 

制震壁の試験を実施していればリサージュ曲線のデータは大抵存在します。

 

 

 

例えば、住宅構造研究所が笠井教授と東京工業大学環境・社会理工学の坂田弘安教授と共同で開発した

 

「延樹・ブランチ」の場合は、図3さんのようなリサージュ曲線を描きます。

 

 

 

(図3)動的な水平加力実験で記録したリサージュ曲線

構造用合板による耐力壁と制震壁(延樹・ブランチ)との比較
 

 

 

同社は様々な制震システムを開発しているが、いずれも必ず3つのステップを踏んで性能を確認しています。

 

 

ただリサージュ曲線は読み解くのは専門的で難しい。

 

 

ポイントは、曲線で描かれる面積と軌跡の傾き。

 

 

軌跡で囲まれた面積が大きい方が望ましいが、傾きが小さすぎても大きすぎてもダメです。

 

 

京都大学の五十田さんは「制震の仕組みはブランコに乗っている人が、

 

揺れを止めようとしているイメージに似ている」と説明します。

 

 

壁の揺れがブランコの揺れと仮定し、制震壁の減衰力は、

 

ブランコに乗っている人が足で揺れを止めようとする力に相当します。

 

 

最も理想的なのはブランコを止めようと常に強い力で地面を押さえつけている状態です(図4)。

 

 

この時リサージュ曲線は面積が大きく形が整った四角形になります。

 

 

 

(図4)理想的な制震システムのイメージ
 

 

 

 

反対に効きが悪いと形がいびつになります(図5)。

 

 

 

(図5)あまり効かない制震システムのイメージ

タイプ1・途中が効かない
 

 

 

 

(図5)あまり効かない制震システムのイメージ

タイプ2・効きが弱い

 

 

 

例えば、タイプ1のように、ブランコの中央部分で足を上げて抵抗力がない状態のものは、

 

軌跡が右上や左下に偏って現れます。

 

 

またタイプ2のように、常に足はついているものの、効きが弱くてなかなか揺れが収まらない状態は、

 

軌跡の傾きが小さい形状になります。

 

 

これらの形状は、制震システムを比べる目安として覚えておきたいものです。

 

 

※日経ホームビルダーは住宅会社向けなので、あくまで住宅会社に言っている言葉です。

 

 

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日経ホームビルダーの記事では、この次に、

 

 

【ポイント2】制振装置 部材特性を考慮しない製品は論外

 

 

いう内容に続くのですが、ここも難しい話が多いので、ここはカットさせていただき、

 

 

【ポイント3】配置・設計  基準ギリギリとせず、制震壁は余力に

 

 

最後にこれを書かせていただきたいと思いますが、

 

今から家を建てる方には、是非、読んでいただきたい内容です。

 

 

 

 

【その4】へ続きます。

 

 

 

 


 
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