2016.08.26 Friday

「震度7でも住める家-等級3に加える4つの提言」日経HB記事より【その6】

「震度7でも住める家-等級3に加える4つの提言」日経HB記事より【その5】からの続きです。


恐れ入りますが、前の記事をお読みいただいてから、読んでいただければ幸いです。

 

 

今日の記事のタイトル
 

 

 

 

耐力壁は、柱頭柱脚金物や筋交い端部金物(筋交い金物)で適切に緊結されていないと、

 

所定の耐力を発揮することが出来ません。

 

 

大規模地震に耐えるには、接合部の適切な施工が欠かせない条件です。

 

 

熊本県の益城町で被災した築年数が比較的新しい住宅で見られた柱脚金物の不適切な

 

パターンの1つは、取り付け向きの間違いです。

 

 

例えば、柱に背割りがないのに山形プレートが上下逆向きに施工されています【写真1】。

 

 

【写真1】
 

 

 

 

もう一つは、金物の選定ミスです。

 

 

15kNのホールダウン金物が必要な柱脚に、10kNしか耐力を期待できない座付ボルトを

 

組み合わせていました【写真2】。

 

 

【写真2】

 

 

 

 

 

 

 

エムズ構造設計(新潟市)の佐藤実さんは「柱脚のホールダウン金物はアンカーボルトを

 

基礎に埋め込むのが原則だ。基礎に埋め込まない座付ボルトだと土台が壊れてしまう。

 

設計図書の指示には15kNとあったので、他のホールダウン金物も同様の施工ミスが疑われる」

 

と話しています。

 

 

 

筋交い金物では、ネジや釘の施工ミスも多数見つかりました。

 

 

2つ割り筋交いにも関わらず30mmの短いネジが使われています【写真3】。

 

 

【写真3】

 

 

 

 

 

 

 

 

本来は7本のネジで止めつけなければならないのに

 

6本しか止められていないものもあった【写真4】。

 

 

【写真4】

 

 

 

 

 

 

 

【写真5】は筋交いの端に釘が打たれて筋交いが割裂している例です。

 

 

【写真5】

 

 

 

 

 

 

ネジの数が不足していたり、留める位置がずれたりしているのは、

 

筋交いの角度とも関係している可能性があります。

 

 

グランデータ(東京都立川市)の橋本晋二さんは【写真4】のミスについて、

 

「筋交いの角度がやや急なのでネジが届かなくなり施工しなかったのかもしれない」

 

と話しています。

 

 

 

カネシン(東京都葛飾区)営業第一課係長の小暮忠克さんは、

 

「幅が1360mm(1.5P)や1820mm(2P)の筋交いで角度が緩くなる時も、

 

ネジの留め付けミスが起きやすい」と話します。

 

 

筋交い金物は910mm(1P)の筋交いに取り付けて試験を行うので、

 

1Pで使いやすい製品が一般的です。

 

 

それを1Pと同じ要領で2Pに留め付けると、金物のネジ穴が筋交いの芯からずれたり、

 

端にネジを打ち込んで筋交いが割裂したりする恐れがあります。

 

 

2Pでも全てのネジが端過ぎない位置に留められる製品を使うことが必要です。

 

 

 

 

 

柱付けタイプは引き抜き対策

 

 

筋交いは圧縮より引っ張り方向の力が弱いです。

 

 

そのため、筋交い金物は、試験機関で引っ張り方向の耐力を満たすことを

 

確認しなければならないです。

 

 

終局はネジが筋交いから引き抜けたり、金物付近で筋交いが切れたりする

 

壊れ方が多いです。

 

 

ところが、柱付けタイプの筋交い金物を使用していた益城町の住宅で、

 

通常の試験ではあまり見られない壊れ方をした例を見かけました。

 

 

筋交い金物を取り付けた柱が引き抜け、柱のホゾが壊れたほか、

 

筋交いがねじれるといった現象です。

 

 

ホールダウン金物は外れていました【写真6】【写真7】。

 

 

【写真6】【写真7】

 

 

 

 

 

 

 

 

工学院大学名誉教授の宮澤健二さんは、

 

「柱付けタイプは柱と筋交いを緊結するだけなので、柱のホゾが地震力の影響を受けやすい。

 

地震時は建物が三次元的に動くので、金物のねじれや横架材からの踏み外し、

 

二次応力などが生じて、筋交いの耐力が低下する可能性がある。

 

使うなら、共用応力度計算が必要だ。

 

建基法施工例45条では、筋交いは柱と横架材に接近して緊結と規定しているのに、

 

横架材から話して施工することも問題だ」と、矛盾を指摘する。

 

 

日本住宅・木材技術センターは、横架材から離した柱付けタイプの筋交い金物に対して、

 

Zマーク金物同等認定はしていない。

 

 

同センター認証部の飯島敏夫さんは、「横架材から離したものは筋交いの角度によって

 

ネジが届かなくなるので、Zマークの筋交い金物とは同等に評価できない。

 

柱付けタイプの筋交い金物を使用したい場合は、許容応力度計算での確認を求める」

 

と話します。

 

 

京都大学生存圏研究所教授の五十田博さんは、過去に行われた様々な筋交いの

 

せん断試験の結果を、柱付けタイプ、ボックスタイプ、プレートタイプ別にまとめました【図1】。

 

 

それによると、柱付けタイプは面材仕上げで押さえている状態でも所定の壁倍率の

 

8割に留まった。

 

 

【図1】

 

 

 

 

 

 

五十田さんは、「柱付けタイプは最大荷重が比較的大きいうえ、引っ張り側の力を受けた時の

 

柱の引き抜きが大きくなる可能性がある。柱付けタイプを使う場合は、ワンランク上の柱頭柱脚

 

金物を付けるなどの配慮があると良い」と話しています。

 

 

 

 

筋交いの引っ張り側の強度を、より強くするための筋交い金物も開発されている。

 

 

岡部(東京都墨田区)の「ブレスターZ600」がその一つだ【図2】。

 

 

【図2】

 

 

 

 

 

 

 

 

金物の形状に変形を吸収する加工を施し、筋交いが15分の1ラジアン以上の変形にも耐える

 

靭性を確保しているのが特徴です。

 

 

 

 

壁量満たしての金物

 

 

益城町で倒壊した建物では、25kN用のホールダウン金物に取り付けられた、直径16mmの

 

アンカーボルトが破断するという例が見つかった【写真9】。

 

 

ただ、住宅が倒壊した原因はホールダウン金物の耐力不足ではなさそうです。

 

 

【写真9】

 

 

 

 

 

 

 

 

カナイ(埼玉県八潮市)常務取締役の金井邦夫さんは、

 

「16mmのアンカーボルトは最大7トンの引き抜き力に耐える。

 

7トンの引き抜き力がかかったら、ホールダウン金物がくの字に曲がり、

 

アンカーボルトの座金が飛んだり金物が切れたりするはず」と話します。

 

 

タナカ(茨城県土浦市)住宅資材営業部部長の岡野久義さんも、

 

「住宅が倒壊する過程で想定以上の曲げやせん断力などがアンカーボルトに作用して

 

破断したと思われる」と言います。

 

 

金物メーカーは「金物がいくら頑張っても壁量が少ない住宅の倒壊を防ぐことはできない」

 

と口を揃えています。

 

 

大規模地震に対しては、壁量を増やしたうえで、

 

耐力に余裕のある金物を選ぶことが重要です。

 

 

 

 

【その7】へ続きます。

 

 

 

 


 
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